自作小説やアニメの評論
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ふとした思いつきに近い思考だった。
小田のように明るい未来があり、妻子もある人間が死に、私のような屑が生き残るのは理不尽な気がした。 私には未来なんて展望はもはやなく、あとは終わりを待つだけなのだ。 私が代わりに死ねば良かったのだと思ってしまう。 気持ちが塞ぎ、私は仕事探しもせずに家でぶらぶらとしていた。 何をするのも疲れ、虚しさに押しつぶされそうになる。 何故、彼のように懸命に生きる者が不幸になり、汚職や賄賂で汚い生き方をした人間は平然と幸せを享受できるのか? ぼんやりとテレビをつけるとワイドショーが始まった。 いい年の男が仕事もせずにワイドショーを見る。 こんな自分に吐き気がするが、他に私がどうすればいいか見当も付かない。 私は何もできない無能な人間なのだ。 ワイドショーは親父狩りにあったサラリーマンのインタビューを流していた。 彼はこのことで身体に障害が生じ、会社を辞めざる得なくなった。 障害年金がでるとはいえ、がんばってコツコツ人生を積み上げてきたはずなのに、はした金でおもしろ半分に人生を潰され。 少年と言うことで犯罪者は守られ、両親は反省のかけらもない。 他の事件では反撃したサラリーマンが、過剰防衛と訴えられていた。 彼らは未成年だから罪にならないとたかをくくっている。 弁護士は彼らに更正のチャンスをと言うが、被害に会って傷つけられた人間や、死んだ人間には何のチャンスもないのだ。 傷つけられ殺されてがまんしろなどと、やられ損ではないか。 万引きやなどの事件と殺人を同列にしていいのだろうか? 人の未来を奪い、自分は知らん顔をする奴らに私は吐き気を覚えた。 PR 「藤代くんどうだった?」
「何もなければ、家賃はただなんでアルバイトしてでも、せめて少しでも金を残すよ」
藤代は笑って言った。 「そうだな、金が命綱だよな」 「昼間、酒飲んでぼーっとテレビ見てるとさ、いかにも苦労なんかしてなさそうな 金持ちエリートなコメンティターが、リストラで一家心中した男を評して。『金が全ての 世の中じゃない、もっと他に道があったはずだ』とか偽善者ぶったこと言うんだよ。金がないって現実が分かんないんだろうな、反吐がでるぜ」 藤代が吐き捨てるように言った。 そう金が無ければ喰うことも寝る場所もない。 そんな惨めな人生なんか関係のない人間がまだごまんといるのだ。 私たちは日頃の鬱憤を思い切りぶちまけた。 かと言って酔っぱらうわけではない。 そんな金など無い事はお互い承知なのだ。 無頼なくらい酔えればいいと思う。 幸せな明日はこないのだ。 「これ、少ないけどな」 店を出てから私は、恥ずかしいかぎりではあるが、少額の金が入った封筒を差し出した。 「えつ」 藤代が驚いたような顔をした。 「少ないが受け取ってくれ」 「でも、、おまえ」 そのあとに続くはずの言葉が、嬉しくもあり悲しかった。 しばらくの沈黙のあと藤代は大事そうに胸の内側のポケットにしまいこんだ。 「ありがとう」 こんな時。 友の旅立ちに私はわずかな餞別しか渡せず、おまけに気を使わせている。 私が職に就いていたら、こんな気分にはさせられないだろうに。 友と別れ夜道を風に吹かれて歩く。 どんな夜も月は変わらず煌々と輝いている。 会社からの帰りにきつい残業が続いても、いつか幸せになれると思い見上げた月。 その時の月の光と変わりはない。 けれど私は年老いて、何も得ず、、ただからっぽになって行くだけだった。 なんの約束もハッピーな未来もない。 まじめに働くと言うことが幸せの条件ではないことを知らなかったのだ。 「幸司、おかえり」 家の茶の間を黄ばんだ電球が照らしている。 希望を見いだすことの出来ない黄昏の風景。 「ただいま」
自分が無能で落伍者だと判断を下された気がするからだ。
経営が苦しいなら、そう言ってくれればいいと、働いている者は思う。
しかし経営者はそんなことはしない。
ある日リストラや倒産がいきなり起きるのだ。
まだ事情があるならいい。
幹部や役員はのうのうと高額なボーナスを手にし、下っ端だけが切られていく。
「もう、何もかもいやになって、、俺の人生何だったのか?と思うよ」
「分かるよ、この年では雇ってくれるとこも限られてる」
「だからまだ東京なら仕事があるかもしれないって、女房と相談して行くことにした」
藤代はまだ仕事が決まってもないと苦笑した。
「お互い大変だな」
ここには相哀れむ中年の惨めな男がいた。
藤代は私に本音を聞いてほしかったのだろう。
家族には弱音ははけない。
「例の大手に自動車会社の派遣切り見たか?」
「ああ」
「俺の会社と同じで、上の奴らは破格のボーナスを貰ったらしい。 会社や他の社員なんかどうでもいい、自分が社長や役員の期間に とにかく金を多めに取りたいだけだからな」
「自分達は何の責任も取らずにな」
経営の失敗や政策の失敗をしても、上の者は責任を底辺の者へと振り返る。
世間は長い冬を越しても、さらに絶望がクレバスのように深い亀裂を広げている。
政治家や公務員と言った守られた生活の者は、破滅する人々を自己責任と言う言葉で葬り去る。 彼らには関係のない実感の湧かない話だからだ。
彼らは自分達の世界での利害に血眼で足下が崩壊するまで気がつくことはない。
「俺が荒れてるから真弓がさ、実家のある東京に行かないかって言うんだよ。実家は酒屋やってるんだ」
真弓と言うのは藤代の妻で、実家が未だに酒屋をやっているのには驚いた。
「まあ、昔からのよしみが何件もあってそこそこやれてるみたいだけど、そのうち半分コンビニにしょうかとか 言ってるみたいだけどな」
「そうか」
「今の世の中酒屋も奇跡なら、コンビニも乱立して危ういんだ、真弓にそこはまかせて仕事を捜すよ、こっちよりはあるだろうからな」
「そうだな」
「俺も公務員にでもなっときゃよかった」
藤代はかみしめるように言った。
彼は学年でも優秀だったので、公務員も難しくなかっただろう。
だが、自分のやりがいのある仕事を選んだのがこの結果だ。
運のいいものと能力のあるものが生き残れる社会。
良く年功序列は嫌だと言っていた者がいたが彼らはどうしただろう。
人間いつまでも若くはない、仕事だって若い時のようにはできないだろう。
なのにマスコミに乗せられ どれほど能力のあるものがいたのか分からないが、乗せられ成功したのは一部だろう。
苦々しげに吐き出した。
そこで続く話は気晴らしも兼ねてと、居酒屋で待ち合わせを約束した。 「母さん。出掛けてくるよ」 「どこへ?」 「藤代のやつが東京へ行くって」 「藤代くんが、、そう、、お餞別がいるわね」 餞別。 これは失念していた。 財布をあけると心細くなるような小銭しかない。 貯金の通帳もわびしいばかりだ。 本来なら、私が働いてたならもっと餞別を出せるのだが、 サラリーローンに手を出すわけにもいかない。 心苦しいがスズメの涙ほどの金を封筒に包み胸のポケットに入れた。 こんな時にはもっとするべきなのだろうが、できない 自分が悲しい。 苦労の連続だった母にまた無心するのも辛い。 日々心は膿み腐れていく、、 大銀行は失業者や老人から搾取した金で自分達の尻拭いをさせ、 トップは驚くほどの退職金をせしめて天下りする。 これが格差社会で、当然なのだろうか? そして中小企業を支援すると言うお題目の金は、中小企業に渡らない。 次々と潰れて行く。 この世はいつも正直な庶民が割を喰う。 サラリーローンの社員が脅し文句で言う言葉は正しい。 法律は冷血で頭の良い者の味方なのだ。 善も悪も情もそこにはないのだと。 待ち合わせの居酒屋は安い酒と食べ物が評判の店で、一品が三百円程度なので、 安給料の私達はここで良く飲んだ。 「いつかはましなとこで呑みたいと思っていたけど、やっぱり最後までここか」 藤代が笑う。 頑固で理屈屋だった私も話を聞いてくれたいつもと変わらない笑顔で 人当たりが良く、人気のある奴だったのに、私のどこが気に入ったのか、 今も定期的に会っていた。 「本当はもう三ヶ月前にリストラされてさ、それ以来、頭がボーッとなって何も考えられなかったよ。 会社につくしてきたのに、この扱いは何だと腹がたって悔しくて毎日酒飲んでさ」 その言葉は良くわかる。 |
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