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自作小説やアニメの評論
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僕の勤めていた書店は、全国に十数店舗を展開する中堅の有名書店だった。
 書店は昔から差益は低いが不況にも強いと言われてきたので、世情不安が僕にまで及ぶとは思いもよらなかった。
 だから定年退職まではがんばらないとなどと夢を描いていたのだ。
 それに、僕の店も会社全般もそれほどの経営悪化は認められなかった。
 毎年売り上げを伸ばし、大学出の同期と同じように昇進し、給料も上がり、
 会社自体も新入社員を応募していた。
 慌ただしい毎日でそれは寝耳に水だった。
「倒産、、て、朝からそんな冗談、、本当ってそんな」
 僕が非番の日にその悲劇的な出来事は起こった。
 休日でのんびりと家の掃除でもしようとしていた僕に、店に入れないと言う電話が、
 古くからのパートさんから電話がかかってきたのだ。
 最初はただの冗談か彼女の勘違いかと思ったが、店に着いた僕はその現実にただ呆然とした。
 店のシャッターが固くしまり、全てを拒絶するよなその表には、簡素なコピー文で倒産のお知らせが張られていた。
 僕はこんな事態になっていることなど知らない、何かの間違いではないのかと何度もその紙を見た。
 社員に何も知らせずに倒産などあるのだろうか?
「あ、チーフこられたんですね。本社に連絡しても誰も出られないから、店長が本社の方に」
 僕に声をかけてきたのは電話をくれたパートの女性だった。
「こんなの、嘘ですよね、、私たち何も聞いてないですよね」
「僕も聞いてないですよ、店には入れないんですか」
「ビルの管理に言っても鍵も貸してもらえないんです」
 僕が来たことで気が緩んだのか、彼女は目をハンカチで押さえ泣き出した。
 僕は泣くよりもただ頭が真っ白になった。
 本社に行っていた店長が戻って来た。
「店長どうですか?」
 店長の顔色は真っ青でそれだけでも事態が深刻なことが分かった。
「本社の方も責任者は誰もいなかった。事務の子が呆然としてたよ」
「本社も封鎖ですか?」
「差し押さえを封じるためなんだろうとか、営業の同期が言ってたよ」
 店長は疲れきったように言った。
 それから僕らは自宅待機することになった。
「他の店舗の店長や、組合の委員と連絡を取ってみるよ」
 店長がそう言うので僕らは不安なまま家で待機した。

 

 

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今日は新入社員の歓迎会だ。
 店長は今、五十代であと少しで定年だ。
 この会社には創業当時からいるからだろう、
 この会社に対して並々ならない愛着を感じているようだ。
 本のことには博識で、新人の教育にも手を抜かずに真剣に、
 本屋の魅力を教えていきたいと常に言っている。
 性格も温厚なので、社員や出版社の人間からも慕われていた。
 僕もこの店長の下で働けて良かったと思っている。
 僕が歓迎会をやる店に着くと、すでに注文が出され飲み物や食べ物は
あらかた揃っていた。
「ご苦労様、待ってたよ」
「お待たせしました」
 店長にうながされて、僕は早速席についた。
「はじめはビールだが、あとは各自好きなものを頼むように、では乾杯の音頭は新人の久保田くんに」
「えつ、俺ですか」
 新人の久保田くんはびっくりしながらも、乾杯の音頭をとった。
「いや、これからが楽しみだね。がんばってくれよ、ベテランももちろん期待してるよ。さあ、どんどん食べよう」
 新人の久保田くんは有名な大学を出ているが、偉ぶったところのない、感じのいい青年だ。
「僕はこの書店が好きで、卒業したらここで働くと決めていたんです」
 その言葉を聞くと僕らの心は暖かいもので一杯になった。
 僕らも本が好きで、この書店が好きだからその気持ちは良く分かった。
 好きな仕事ができるのは、本当に幸せなことだった。
 僕らはこの先に暗い未来がくるなんて思いもせずにみんな楽しんでいた。

 

 

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僕は思うのだ。
 どうして僕らは死ぬしかないところまで、追い込まれたのか。
 負け組はやりなおすチャンスも無く、生きて行く権利さえないのか?
 過去を何度も悔やんだ。
 だが取り返しはつかない。
 僕は自分のこれまでの半生を思い出した。
 もう終わりなんだから一生だろう。
 走馬灯のごとくと言うのは本当だ、辛い思いや楽しかった過去が洪水のように蘇りあのころに戻りたいと叫んでしまいそうになる。
 僕は親を早くに亡くしたので、叔父の世話になっていたが、申し訳なかったこともあり、高校を出てすぐ就職を決めた。
 読書が好きだったことと、高卒の僕でも正社員で働けると言うので、とある書店の正社員になった。
「今日の入荷チェックお願いします」
「レジの釣り銭補充終わりました」
 開店前は商品の入荷や、レジの備品補充などやることは山積みだ。
 立ち読み防止のために、雑誌やまんがをビニールで包まないとならない。
 そんなこんなで時間がかかる。
 最近はモラルが欠如している客が増え、立ち読みして買わないならまだしも、本を破ったり汚したり、本の上に平然と濡れた傘を置く者もいる。
たくさんあるのでたいしたことはないと思っているのだろうが、一冊ごとに値段のある商品なのだ。
 金も払わず汚すことは許されない他人の所有物なのだが、そんなことさえ分からないのに、客だといいつのる。
 また万引きも増えた。
 古書店が拡大路線を引き、増加したため、そこに売るため、万引きするのだ。
 それらに対処する置き位置も考えないとならない。
 あっと言う間に開店時間になり、あわただしい一日が始まる。
 雑誌の付録つけやらで。まだ準備のできていないものを優先し、在庫確認や棚整理などしたあと、発注などの業務をし、レジの応援など細々とした作業で一日を終わる。
 重要なのは発注で新刊がいくら売れるか、目玉となるものは何冊売れるかが問題だ多すぎる過剰在庫になるし、少ないと売りの逃してしまう。
 かといって本の問屋や本部が希望どうりに配本してくれるとは限らない。
 過去の実績や話題性、立地や客層も配慮し仕入れする。
 本社の指示もあるが、こっちの意向が当たった時はとても嬉しい。
 書店の仕事は、僕にとって最高に楽しい仕事だった。
「お疲れ様。今日の歓迎会はいつもの所で、先に行ってるよ」
 閉店後の雑用をこなしている僕に店長が声を掛けてきた。

 

 

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負け組と呼ばれる僕らは、生きてはいけないのだろうか?  
家庭や子供を持ち、将来に希望を持つ権利はないのだろうか?  
希望など持たず。  
夢など持たず。  
世界は平和で明日も明後日も、まじめに生きていれば少しずつ良くなると、信じて来た。  
その世界は崩壊していく。  
ぎりぎりその日を生きて、使い物にならなければ破棄されてしまう。  
日本には最低限の生活を保証する法律があるが、それでもまた口利きや、権力の構図の中で、容易に享受できる者と、受けられない者がいる。  
平等なんかない。  
汚職しても復帰する政治家。  
企業の失策で犠牲者を出しても償うことなく、大金を持ち退職するトップ。
国民の税金で無駄な建物を建て、巨額の損失をだしても平然とし、法外な退職金を手にする官僚達。 金と権力さえあれば、罪は問われない。  
そんな力のない者は虫けらと言うのだろうか  
空は抜けるように青く、人々は希望に満ちた表情で往来を闊歩する。  
都会の朝はそんなものだ。
以前は僕もその群の中の一人であり、それを何の不思議もなく享受していた。  
明日はまた繰り返しの平凡な日々とこぼしていたかもしれない。  
その平凡こそ今は望むべくもないものになるとは知らずに。  
明るい光景とは無縁の者達の中の一人となることと思わずに。  
ファーストフードと言うのは、この世で貧乏人にはいいシステムである。  
100円のコーヒー一杯で長い間居座れるのだ。  
100円も惜しいが、居場所のない者にはありがたい。  
そんなファーストフードに暗い表情の者達が、壁際の一人席に掛け、ガラスの向こう側に広がる世界をただ眺めている。  
男が四人と女が二人、互いにしゃべることもなく、一人掛けの席に掛け、押し黙っているのだ。 
店の者にすればこの陰気な集団なのか何か分からない者達に立ち去って欲しいだろうが、彼らにはそんなことは出来ない。  
 いき場所などないから、今ここにいるのだから。  
何故そんな事情が分かるかというと、僕がその中の一人だからだ。  
男や女は年齢や服装もばら
ばらで、親しげですらない。  
何の集まりか、いや集まりであるかさえも余人には分からないだろう。  
それもその筈、彼らは今日初めて顔を合わせたのだから。
「樹海へ行こう」と言う自殺志願者の集まるサイトのオフ会なのだ。
「樹海へ行こう」と言うのはその通り、希望を未来に持てず、いつの間にか無価値になった自分の人生にケリをつけたい人々の集まりだ。  
最近は集団自殺を防ぐために、こう言うページは警察に監視されていると聞くが、ここは管理人が上手いのか、それほど過激でないからなのか、今日ここでオフ会を開くまで持てた。  
今日集まったのは主に深夜にやりとりしてるグループで、全員が集まったわけではない。  
オフ会即樹海へと行くかもしれない真剣な集まりだからだ。  
だからなのか、先ほどから各人の口は重く、ネットでのあの雰囲気などない。  
初対面と言うこともあるし、人生を終わらせる相談をするのはしにくい。  
女性達はぽつぽつと話初めているようだ。  
何かを提案しなければと思う反面、あとから来た僕に発言はしにくい。  
そしてまた、、心に思うことが僕の口を重くしているのだ。  
どうしてぼくらは、、虫けらのように死ななければならないのかと
 

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こんな人間を許す世の中で、いいのだろうか?
私は何故だかこれが私の使命のように感じた。
この間違いを糾すことがやるべきことなのだと。
わけのわからない義憤が脳を支配する。
昔買って使わなかったナイフを引き出しの奥から出した。
そっと握るとずしりと重い。
刃は鋭い光を放っている、
これで世間の矛盾に思い知らせるのだ。
私がこの腐った世界に一石を投じなければならない。
何もない人生に意味を持たすのだ、
親父狩りをする少年達を見つけ、彼らを叩きのめす、、否刺し殺す。
また私が殺される可能性もある。
私が殺された場合でも意義があったということを知らせるため、胸のポケットに決意書を書いていれた。
私は獣を追う猟師のような気分で家を後にした。
風が冷たい。
ポケットのナイフが重い、その重みが私に力をくれるようだ。
映画の中にでもいるような、なにか晴れがましい気分で私は日の暮れかけた繁華街やその付近を彷徨いはじめた/
何度か髪の毛を染めた派手な少年達を見たが、彼らは集まってはばらばらになり何処かへ消えていく。
何の事件もなく世が更けて、ついに駅前通りの店も全て閉まった。
寒々とした夜の空間には私だけが佇んでいた。
深夜になっても少年達の姿はなかった。
あったとしても、コンビニで買い物をするだけで立ち去っていく。
意気込んだ思いが風船のようにしぼんでいく。
風が身にしみた。
途端に自分のしていることが、あまりにばかばかしく思えた。
結局、私のすることはこの程度なのだろう。
手の中のナイフを握りながら暗い道をとぼとぼと家路に向かった。
夢がさめ滑稽な自分があまりにもみじめに思えた。
古ぼけた団地が我が家が見えてきた。
壁にはヒビがが入り、ところどころ廊下の電気が切れている。
エレベーターの前に、私は母の姿を見つけた。
私の帰りが遅いのを心配し、ずっと待っていたのだろう。
カーデガンを羽織る小さな肩が震えている。
「母さん」
「どこ行ってたの?心配するじゃない」
私はこの時気がついた。
私は独りではない、母がいるのだと。
こうして待ってくれている母を最後まで看取ってやらなければならないのだ。
私は自分よりはるかに小さくなった母の肩に手を添え、家にかえろうと言った。


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