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自作小説やアニメの評論
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 相哀れんでいるんだろう。

 僕らは誰かに親身に話を聞いて欲しかった。

 そして、切り捨てられるのではなく同意して欲しかった。

 自己責任だとか、能力がないとか、そして勝ち誇った優位な目線からの説教など聞きたくはなかった。

 ただ、全面的に肯定して欲しかったのだ。

 甘いとは言われるだろうが否定されても苦しいだけだ。

 死に向かうのにわざわざ苦い思いはしたくない。

 お互いにそれは理解しているのか、みんなは自分の境遇の不満や不安を話ながらもその痛みをわかりあえることで、安らかな心境になっていった。

 ネットでの会話も総合して、みんなの状況がいかに精神を疲弊させているかが理解できた。

 ソニアさんは四十代で夫とは別居中だ。子供はいたが幼いうちに亡くなり、旦那さんは自営業だが経済悪化のおりに辞めざる得なかった。

 夫が仕事も無く、ソニアさんの稼ぎをあてにして酒やパチンコざんまいになり、最後には暴力まで振うようになった。

 働いて、夫の親の介護までして、子供もなく、夫の暴力に耐える人生に希望が見えなくなり、別居したが、先も見えない人生にあきらめたと言うのだ。

 

 

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樹海へ行こうの過去まとめ分です
ある男がまとめて読めます

 







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 だが、彼女もいろいろな事情があるのだろう。

 生きにくいという僕らの時代には、昔はあった希望がすべて引きはがされていた。

 まぼろしでもいいから希望があればいいのだが、それさえもない。

 為政者は金を引き抜き、それが露見してもなんの罰則もない。

 法律は権力者が自分の都合よく作り、何事もないように世界は流れている。

 そして弱者は踏みにじられるのだ。

 腐った世界、、

 この世界は崩壊していく

 その思いは単に僕の感想にすぎないのだが、

 自分の感じる世界が自分の全てなのではないだろうか?

 僕らは自分がもうこの世界では生きていけないことを感じている。

 だから去って行くことを罪だとは思わない。

 僕らは話やすいように空いているテーブル席に移動した。

 店側とすれば、安いコーヒー一杯で何時間もいる客は迷惑だろうが、僕らの中には僕も含め実質お金のない人もいる。

 そんな者に提供されるファストフードの場所は貴重だ。

 僕らはおそるおそる、互いに対話を始めた。

 

 

 

 

 

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 声を掛けてくれたのはソニアさんだった。

 居酒屋勤めと聞いていたが、地味な感じの人で、髪こそ茶色に染められていたが、艶はなく、本人の顔色もくたびれていた。

 彼女の背負った苦しみが年よりもさらに老けさせているのだろう。

 お互いに本名は名乗らなかった。

 もう、呼び名で定着しているのでそれでいいだろうと言う話になったのだ。

 自己紹介が始まった。

 ナーガさんは二十代後半だが、想像していたよりはイマドキの格好のいい青年で、美男子のといえるだろうが、彼の場合は若さのない疲れがにじみ出ていた。

 あまりなじみのない人が二人参加していて、中年のおじさんはイサオさんと言って、ネットカフェ難民だ。

 ネットカフェに泊まれる時だけ参加してるので、あまり馴染みがなかったが、年齢は五十代のはずなのに、喰うや喰わずなのかもっと高齢にみえる。

 あと驚いたことに、こんなところにどうしているのだろうと思うような、美少女がまじっていた。

 かりんさんと言う彼女はまだ二十代らしく、昼間の常連なのであまり僕は知らないのだが、ナーガさんや、ソニアさんは知っているようだ。

 どこかのお嬢様のような彼女が、他の人には失礼だが、人生の敗残者の集まりにいることに、正直僕は驚いた。

 

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だが二階へと上がってやっと僕は目当ての人物と巡り会え、抱いていた不安が払拭されたのだった。

 

その男は二階から外を見渡せるカウンター席に座って、時たま後ろを振り向いていた。  

 

そして彼のすぐ横のカウンターの上に、樹海ツアーとパソコンで作ったであろうシャレたデザインの紙が、斜めに立てかけていた。  

 

少し小太りで背の高い彼がきっととんさんなのだと僕は思った。  

 

ネットのイメージと彼はそれほどかけはなれてはいなかったからだ。  

 

だからこそ初対面でも勇気を持って声をかけることが出来た。

 

「あ、、あの俺」  

 

現実の世界でネットのハンドル名を告げるのは気恥ずかしいが、思い切って名前を告げた。

 

「ども、俺がとんです。会えて嬉しいです」  

 

彼は柔和な微笑みを浮かべて僕に自己紹介した。

 

「他の人はまだですか?」  

 

カウンター席に座っていることで、僕はとんさんが一人だと勘違いしていた。  

 

だが、彼は窓際のカウンター席を埋めている人々を振り返った。

 

「みんな、もう集まっているよ、あなたで最後です」

 

「す、すみません。遅くなって」  

 

僕は時間どおりに来たのだが、他の人達はもっと早く来てたらしい。  

 

そのことにみんなの決意が見てとれて、少し恥ずかしくなった。

 

「大丈夫、みんなもさっき集まったとこだから」  

 

四十代の疲れきったような女性が、かすれたような声で僕に告げた。

 

 

 

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一応部屋の掃除と、あと始末をして貰うように、大家あての手紙にいくばくかの金を入れ、テーブルに置いた。
 僕が死んだあとすぐに処分してくれるだろう。
 長い間住み慣れた狭い部屋にもう僕は帰ってはこないだろう。
 いいことなどない思い出しかないが、永遠にここから出ることに幾ばくかの寂しさを感じていた。
 必要なものを詰め込んだリュックを背負い玄関をでると、すがすがしいような、未来が明るいかのような錯覚を覚えた。
 いや錯覚ではない、もう何者も僕をしばり付けることは出来ないのだから。
 
 不思議と明るい気分で、僕は待ち合わせであるファーストフードの店へと入った。
 目印は樹海ツアーと書かれた紙をとんさんが持っているらしいので、それらしい男性をさがせばいい。
 どんな人が待っているのだろうか、店内に入店し一階にそれらしき人がいないのを見て、僕は一気に不安になった。
 僕はからかわれただけなのだろうかと言う猜疑心が芽生えてくる。
 あの人達はネカマのように、ただ死にたいフリをしているだけで、実はこんなとこにくるとんまで哀れな男を笑っているのではないかとか。
 口ではなんだかんだ言っても恐くなって逃げ出したのではとか、僕は自分が実はたったひとり取り残されているようなそんな不安を抱き始めた

 


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